けふ、意を決して引き戸を開けるに、やはり老婆の一人が出迎へき。客は吾より他に一人もなし。先にもひとの来れる様の無きは、チラシの折り紙なる紙袋の散乱したるていにて計れり。
とりあへず珈琲を頼みしところ、頼まぬうで卵のつまみに付きたるは、これまさに一昔の場末の店にありがちなる業なれば、いささかの感興も覚へども、殻の張り付くが如き固き茹で方に、限りなく湯に似たる珈琲、「科捜研の女」の再放送のうるさき声、全てに耐へかね早々と店を後にす。
おほかたの予想超へて痛々しきさま、珍しけれど他人にすすむべからず。
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