2014年03月13日

古き人の新しき店

日の本一の建て物も新し、浪速の地は老若男女かまびすしけれど、一駅離るるに、売る商人、買う客、冷かしにうろつく人々、みな一様に年寄りの多きこと、余所のたぐひにもれず。かやうな地にありて、二年がほど前より現れたる茶店あり。喫茶店とは名乗りながら、そのおもての気合の入らざること他になし。やすき紙に屋号のみをやすき印字にて、ガラス戸に貼り付けしさまの、かへって面白き趣向と無理に思はぬでもなし。

けふ、意を決して引き戸を開けるに、やはり老婆の一人が出迎へき。客は吾より他に一人もなし。先にもひとの来れる様の無きは、チラシの折り紙なる紙袋の散乱したるていにて計れり。

とりあへず珈琲を頼みしところ、頼まぬうで卵のつまみに付きたるは、これまさに一昔の場末の店にありがちなる業なれば、いささかの感興も覚へども、殻の張り付くが如き固き茹で方に、限りなく湯に似たる珈琲、「科捜研の女」の再放送のうるさき声、全てに耐へかね早々と店を後にす。

おほかたの予想超へて痛々しきさま、珍しけれど他人にすすむべからず。


posted by いにしへびと at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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